Column : 植物の不思議

色素体七変化

種子植物の細胞は、光合成を担う葉緑体(chloroplast)以外にも、有色体(chromoplast)やアミロプラスト(amyloplast)、エチオプラスト(etioplast)などの特有の細胞内小器官をもちます。葉緑体を含め、これらの細胞内小器官はまとめて色素体とよばれ、原色素体(proplastid)という未分化で原始的な色素体が分化することで生じます。
陸上植物の親戚でより単純な構造もつ単細胞性の藻類では、色素体はもっぱら葉緑体として存在するため、もともとは葉緑体が色素体の基本的な形態だと考えると、種子植物では、多様化した細胞の機能に合わせて葉緑体も様々なタイプに分化するようになった、と捉えることができます。これは、光合成を行う細菌であるシアノバクテリアが細胞内に共生して葉緑体となった、という考えとよく合致します。もしかしたら、葉緑体の分化多能性―つまり脱分化して原色素体になったり、そこからさまざまな色素体に分化したりする能力―の獲得が、種子植物の繁栄に決定的な役割を果たしたのかもしれません。
ここでは、種子植物の独創的で多様な生き方を細胞の中から支えている8つのタイプの色素体たちを紹介します。

色素体の紹介

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原色素体/プロプラスチド
(proplastid)

すべての色素体のはじまりのかたち。種子の細胞や、分裂組織の細胞内にあり、核からの分化の指令を待っている。成熟した種子胚の細胞に含まれる原色素体は、エオプラスト(eoplast)と呼ばれることもある。

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葉緑体/クロロプラスト
(chloroplast)

言わずと知れた、色素体の代表格で、光合成を担う。内部にチラコイド膜を発達させ、そこにクロロフィルをためるので、緑色にみえる。

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エチオプラスト
(etioplast)

光を浴びて葉緑体になる前の状態。もやしの状態の被子植物の子葉の中に見られる。チラコイド膜のかわりに、プロラメラボディとよばれるジャングルジムのような格子状の膜構造をつくる。

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有色体/クロモプラスト (chromoplast)

内部にカロテノイドをため、赤色や黄色に見えることから、このように呼ばれる。トマトの果実の赤色や、バナナの果実の黄色、ヒマワリやキャベツの花びらの黄色は、有色体の色に由来する。

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アミロプラスト(amyloplast)

デンプン粒を内部にたくさん貯めこんだ色素体。ジャガイモの可食部(塊茎)やお米(イネの種子の胚乳)のデンプンはこのアミロプラストに蓄積されている。デンプンの貯蔵の役割の他にも、根端などの細胞が重力を感じる際の平衡石としての機能があることが知られている。

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ゲロントプラスト
(gerontoplast)

葉が老化するとき、葉緑体は光合成活性を失い、チラコイド膜やクロロフィルも分解される。この老化過程にある葉緑体をゲロントプラストとよぶ。ゲロントプラスト内にはカロテノイドなどを含んだ油滴(プラストグロビュール)が蓄積する。

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エライオプラスト(elaioplast)

脂質による油滴を内部にため込んだ色素体。脂質成分の貯蔵庫としてはたらいたり、花粉を取り巻く脂質の層の形成に寄与したりする。

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プロテイノプラスト (proteinoplast)

タンパク質による顆粒を内部にため込んだ色素体。どのようなタンパク質がどこから来るのか、未だ謎に包まれている。

※ アミロプラストやエライオプラスト、プロテイノプラストのように色素をもたない無色の色素体を総称して、白色体(leucoplast)と呼ぶこともある。

Illustration © 2023 chiru.
色素体のイラストは、chiru様からご提供いただきました。イラストは著作権により保護されており、無断での利用や転載などは禁止されています。

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